Better Than Chocolate

Better Than Chocolate [DVD]

Better Than Chocolate [DVD]

Better than Chocolate (1999) dir. Anne Wheeler

以前見たのは間違いないのだが、ほとんど覚えていなかったので、再視聴というより気分的にははじめて見る映画。

で、なんでほとんど覚えていないのか、わかった。基本的にはとても気分良く見られるのだが、気分良く軽く見られすぎて、印象が流れてしまうのだ。ちょっと良くできたテレビドラマのおもむき。

運命の恋人!みたいなのにいきなり出会って仲良くなる冒頭からはじまって、とにかくかわいくて軽くて気分の良いロマンチック・コメディではあるのだが、それを超えて「引っかかってくる」部分がない。全体に非常に安易。

ただ、それは必ずしも悪いことではないとは思う。余りいらいらせずに楽しめるレズビアン・ロマンチック・コメディがあったって良いわけで、だから、10年近く前のこととはいえこの作品が結構な人気を博したのも理解できる。主役の二人も、人物造形がたりない気はするものの、ロマンチック・コメディとして見れば、ラブラブぶりがかわいらしいので良いのかもしれない。

離婚してきたママが、娘のセクシュアリティに戸惑いつつ、トランス女性のお友達に感化されつつ、少しずつ元気に幸せになっていくのも、安易といえば実に実に安易なのだが、気持ちは良い。バイのお友達があっけらかんとバイで、それが特に何も問題にならないのもいい。トランス女性のお友達ががっつりと意中のダイクの心を射止めるのも、筋書きとしてはなにそれどこからそういうことに、という驚愕の強引さではあるけれども、後味はいい。

親へのカムアウトの問題にはじまって、検閲の問題だの、レズビアンからのトランス・ハラスメントの問題だの、母娘の世代間交流(衝突を含めた)だの、ホモフォビックな暴力の問題だの、いろいろな問題に少しずつ触れているのに、そのどれもがどうもきちんと描ききれていないというか、教科書的なお行儀の良い扱いで終わっているのが、つまらないといえばつまらないのだが、しかし、そういう教科書的なお行儀の良さすらなかなか手に入らないことを思えば、これは貴重だ。10年前の映画なんだし。

2008年の段階でレズビアンを描いた映画として評価しようとすればそれほど高くは評価できないのかもしれないのだが、ロマンチック・コメディというジャンルものだと思えば十分以上に楽しめる、という感じだろうか。